村の近くに幾多の人食いの怪物が住み着くようになったのが、そもそもの始まりだった。
やむなく村の人々は、生まれ育った地を捨てて出て行った。
ただ一人、熱病にかかり、もう助からないだろう娘を残して。

しかし、娘は熱病から回復する。
村中を探してみたが、もはや誰一人として村に残ってはいなかった。
人間は一人もいなかった。代わりにいたのは、怪物だった。

彼女が出会ったのは、二匹の怪物
何故かどちらも、娘が人間だとは気付かない。
敵意など微塵も感じられない。

それでも、気を許すことなどできなかった。

惑う彼女の意識の中で、村の伝承が語りかける。
人間と怪物は、古来より争い殺し合う生き物なのだと。

inserted by FC2 system